introspection

取り留めのない考えごとを忘れないための内省的日記

コンテンツ

北川恵海の『ちょっと今から仕事やめてくる』が発行部数70万超えで映画化されたと聞いて、やっぱりこの手の作品は売れるんだなあと。個人の見解だから全くの的外れかもしれないけれど、昨今の小説の売れ線として、「共感」と「逃避」の要素を満たしていること、というのが挙げられるかもしれない。『ちょっと今から〜』は、ブラック企業で働く主人公が同級生を自称する男と出会ったことで人生を変えていく、というあらすじの物語だけれど、これは前述の「共感」と「逃避」の二要素をどちらも満たしていないだろうかな。

 

そもそも、この小説を出版しているMW文庫を擁するカドカワは、社会のニーズを分析して売れる作品を作っていくのがとても上手いし、メディアミックスなんかを用いた作品の売り方も大手出版社の中ではダントツに上手い。例えばウォルト・ディズニーのように映画や出版、インターネットなどあらゆるマスメディアを傘下に収める複合企業のことをメディア・コングロマリットと呼ぶけれど、恐らくカドカワが目指しているのはそういうところなんじゃないだろうか。三年前のドワンゴとの経営統合もその一貫だと考えられるね。

 

本が売れない時代に出版社がそういう施策を打つのは至極妥当なことだと思う。というか、出版社以外にもエンターテイメントやコンテンツを扱う企業は最終的にコングロマリット化していくのかもしれないね。十数年後には任天堂がそんなことになっていたとしても何ら不思議はないけれど、こういう流れはものづくりへのこだわりを殺してしまうかもな。ファンとしてはとても寂しく感じる。