分節
育ち
俺も小さい頃はそんなに幸せな家庭で育ったわけではなかった。だからなのかは分からないけど、初対面の人と話した時に「なんとなくこの人も特殊な育ちをしたのかな」と察してしまうことがある。必ずしも当たるとは限らないけど、打率八割くらいは維持しているんじゃないだろうか。
もちろん自分も含めてだけど、特殊な育ちをした人っていうのはなぜだか人間的に薄っぺらくみえてしまうことがあるんだ。気を悪くしないでほしいな。俺が自分の薄っぺらさに常日頃辟易していて、自分とよく似た他人にその嫌悪感をぶつけてしまっているだけかもしれない。だから全員が全員薄っぺらいなんていうつもりはないんだ。ただそんな人が割合に多いような気がして。
どうしてそんな印象を抱くのか?俺自身の内省も含めてちょっと考えてみたよ。たぶんだけど、特殊な育ちをした人っていうのは子供の頃に周りの人間の顔色を伺ってきたことが多かったんじゃないだろうか。いや、そうせざるを得なかったともいえるね。俺も小さい頃はいつも家庭内の空気を察知して上手く両親の気持ちを慮っていたな。そうしないと夫婦喧嘩に巻き込まれたり、思わぬとばっちりを食らうことがあったからね。前にも何かのエントリで書いた気がするけど、長く続けている習慣っていうのは大人になっても頭に強固に刻まれ続けるようだ。今となっては必要以上に他人に気を遣う必要なんて全く無いのに、昔の癖が抜けずに俺も大変困っている。
そんな風に自分以外の人間ばかり見つめて行動を決定していると、自分はどんどん他者からみて好ましく、害のない存在に適合化されていってしまう。同年代の子たちが彼ら自身と向き合ってアイデンティティを確立していく中、俺たちはいつだって人の顔色ばっか伺ってたんだ。だから大人になった時、アイデンティティの土台がしっかりと確立されている彼らとの間にはとても大きな差が開いてしまうんだな。
つまり人間的な薄っぺらさっていうのは、確固とした自己というものの欠如がもたらすものなのかもしれないね。小さい頃に苦労した分、経験値を与えてレベルアップさせてくれればいいのに、なんて思うけどな。どうやら小さい頃の苦労は、レベルアップどころかレベルダウンを招いてしまうらしい。乾いた笑いが出てきちゃうね。
潔癖
潔癖症というほどでもないんだけど、ちょっとした不潔に過敏なところがある。不潔といっても、自分のものなら大丈夫なんだ。そこまで散らかすことはないけど、自分の部屋が汚かろうがそこまで不快には感じないし、変な話、鼻水とか唾液みたいな自分の体液を触ってもなんとも感じない、まあそりゃそうか。汚い、って感じてしまうのは他者の介在があったときなんだ。そもそも、俺自身はそんなに綺麗好きな方ではないからね。他者の介在っていうのは、例えば、水筒の回し飲みとか、一つの皿に盛られた料理をみんなで箸でつついたりするああいうのだ。
しかし最近気付いたけれど、親しい人とであれば、回し飲みも直箸も別に不快には感じない。あまり慣れていない人だったり、どこか清潔感のない人だなあと感じている相手だったりすると、ちょっと不快になっちゃうね。そして全く知らない初対面の相手だと、不潔に感じる行為がぐんと多くなる。咳とか鼻をすする音とか咀嚼音とか頭をポリポリする音とか、そんなのですら嫌な気分になるし、生理的嫌悪感を感じる相手だと、喋り声や笑い声を聞くだけで嫌な気分になっちまう。
お前は一体何様なんだよって話だと思うけど、俺も治したいなあと思ってる。というのも、俺がこんな風に初対面の人にどこか不潔感を感じていることは、間違いなく相手にも伝わっているんだ。でも、それが原因で嫌われちまったら思われたら悲しいじゃないか。
前に、セックスよりAVの方が好き、みたいなことをブログで書いたけど、それは単にこういう理由によるものなのかもしれない。要するに、人と粘液が触れ合うような清潔と言い難い行為は、俺にとってはとてもハードルが高いんだ。そのハードルを超えるには、そんな不潔感すら快いと感じるような人が相手である必要がある。つまり、しっかり付き合っている恋人だね。お酒の勢いで一夜の付き合い、なんてのは俺には到底無理な話だ。もしそんなことになっても、きっと上手くいかないと思う。とっつきにくいとは思うけど、事実上浮気をすることが不可能である所は美点だと思わないか?
ちなみに、悪や過ちを許さない性格のことも潔癖と呼んだりするね。俺は精神的な面に関しては全く潔癖ではないなあ。悪や過ちもあって仕方ないと思うし、時には自分も犯してしまうことがあるからな。物理的な潔癖よりも、精神的な潔癖の方が生きにくそうだ。